マツコ・デラックスにみるモバイル時代の価値創造について
テレビをつければマツコ・デラックスさんと有吉弘行さんばっかり出てますが、お二人の活躍を説明するうえで重要になるキーワードは「キャラ」でしょう。
マツコさんにはすべてを凌駕する強いキャラがあり、有吉さんには他人のキャラを定義する圧倒的な観察眼があります。
マツコさんのキャラというのは言わずもがなの見たまんまですが、巨体のおじさんが極めてナチュラルに女装をし、ジェンダーに代表される我々がもつ先入観を取り払った独自の世界観からユーモラスで小気味よいトークを繰り出します。
聞くのも上手だし。なかなかいませんよね、そんな人。
美輪明宏より親しみやすい点が大きなポイントです。
有吉さんの今に至るブレイクは、あの「あだ名」芸が契機です。
V6の「田吾作」と「兵藤ゆき」が結構好きです。
結構一時期だけだったと思いますが、あの一時期で、彼は、芸能界の誰がどういうキャラかをすべて定義しきったわけです。
タレントをコントロールする司会者として抜擢されるためには十分すぎる実績と思います。
■キャラがなぜ大事か
いま、一部の人が問題視するように、中学や高校のクラスではキャラが蔓延しています。
「ゆるキャラ」、「天然キャラ」、「いじられキャラ」、「傲慢キャラ」といったキャラのラベリングがなされ、各人は担当するキャラにそったふるまいをすることが求められます。
ここでのキャラとはつまり、個人が組織と接続する際のキーであり、既定の「キャラ」というプロトコル以外では、彼らは「仲間」に接続することができないのです。
このようにキャラが隆盛を誇る背景には、世の中が過剰に複雑化しているという事実があるでしょう。
ニクラス・ルーマンの言う通り、世界の複雑性が制御不能なまでに高まる中、我々が手遅れにならない速度で意思決定をしていくためには、「信頼」によって複雑性を縮減する以外に方法はありません。
個性が礼賛されて、多様性が認められると、社会はより複雑になります。
その複雑性を縮減しているのがキャラだということです。
冒頭の例に戻りますが、テレビのコンテンツを楽しむためにはある程度コンテクストを理解する必要があります。
しかしながら、有吉さんがキャラを定義することで、視聴者は複雑なコンテクストを理解しなくとも、少なくとも有吉さんがつくり出すストーリーを消費することができます。
■現代組織マネジメントとキャラ
キャラは、実はビジネスにおいても重要性を増しています。
私は新米経営者なのでマネジメントの本をいろいろ読んで勉強しているわけですが、マネージャーがリーダーシップを発揮する上での重要な概念に、オーセンティシティというものがあります。
オーセンティシティというのはつまり、信頼が置けること、確実性のことで、ウォレン・ベニスがいう「本当の自分」のことですが、上で述べたキャラと限りなく近い概念です。
ハーバード・ビジネスレビューの教科書によれば、ビジネスリーダーが真実を語っていると感じる人はわずか18%、仕事に積極的に取り組んでいると回答する従業員はわずか13%しかいません。
こうした中にあって企業は、リーダーがその人らしさ、つまりキャラを手に入れ、一貫した態度で他者に対してオープンに接し、高い信頼を勝ち得ることを求めています。
■これからのビジネスで求められるもの
既に述べた通り、世の中はどんどん複雑化しています。
それは社会の発展でもありますが、予見可能性が下がることで、人は不安になります。
これを解消するのがその人らしさなわけです。
いつも同じようなスタイルで、同じようなことを、同じように話す。
不確実な世の中で、確実なものはキャラに対するコミットしかありません。
「キャラ」というインターフェイスの形式化が信頼を醸成し、制度化されたチームを通じて、パフォーマンスの安定化が実現します。
これから到来するモバイル時代では、強いキャラがますます重要な価値になっていくでしょう。
そうした時代にあって高い付加価値を提供することを目指す当社でも、強いキャラを持った、時代を先導する人物を求めています。
マツコ・デラックスさんみたいな。
オフィスがすぐに手狭になりそうですが。