エスカレーターとデザインの話
おはようございます。
ユニフィニティーの曽良(かつら)です。
当社が定めている重視すべき価値観、言うなればUnifinity Valueのひとつに「デザイン」があります。
デザイン。
悪くないイメージの言葉ですが、逆にこれというイメージを絞りづらい言葉だとも思います。ともすれば「なんとなく今風」みたいなざっくりしたイメージに落ち着きがちな気もします。例えば「デザイン性が高い」といったような言い方をする場合、まさにそういう意味だと思います。
日本語は、外来語をカタカナにしたうえで○○性とか○○的とかいうふうにラップして、雰囲気だけで意味のない言葉にするのがうまいんですよね。デザインもそんな言葉のひとつのような気もします。
だったらそんな曖昧な言葉をそんな大事なところで使うなよという気もしますが、覚えやすくてイメージもきつくない、自分が言いたいこととも乖離してない、となるとなかなかないので、便利は便利なんですよね。こういうタイプの言葉は。
で、デザインという言葉で、いったい何が言いたいか、です。
これは、どうあるべきかを利用者に訴えかけることが大事ということだったりします。
例えば、エスカレーターってありますよね。最近、エスカレーターの利用方法を巡って議論があることはご存知でしょうか。要は、エスカレーターの上では(少なくとも片側は)歩くべきなのか、それとも立ち止まって単に乗るべきなのか。
みなさんご存知だと思いますが、現状は「止まって乗るけど片側は空けよう」という整理になってます。まあそれでいいじゃんとも思うわけですが、誰かが一石を投じたのだと思います。「邪な歩く派のために片側が使えないのは理不尽である」と。プリミティブな利害の対立はその後止揚され、現在は「そもそも歩くと危険なのである」という安全性の問題が争点になっています。安全性とリスクで煽られると弱い鉄道各社は早々に折れて、危ないからエスカレーターで歩くのはやめようと貼り紙をしたりしていますが、現場の運用は一向に定まらないという感じです。不毛です。
これってすごくデザインの話だなと思うのは、あんな階段みたいなデザインしてたらそりゃ歩くでしょと思うわけです。だって階段じゃないですか。どう見ても。語りかけてくるわけです。UIが。ここはテクノロジーの力ではやくラクに昇れる階段だよと。そんな旧時代的なただの段差ではなくてこちらを昇ったらラクだよと。これは圧倒的ですよね。
この圧倒的なUIの力の前には、ポスターや貼り紙など無力なわけです。だってどう見ても階段なんだから。「見ればわかる」んですよ。あれが階段であることは。同じように、トイレの前に赤色で人間のマークを書いたら、それはもう女性トイレです。女は利用するなと書こうが男性専用と書こうが大した意味はありません。直感なんですね。人が行動を決めるのは。そこで「正しい」行動を取らせるのがデザインだと思います。
結局エスカレーター上では歩くのがいいのか止まるのがいいのか、つまり「正解」がよくわからないのでエスカレーターがデザインとして成功しているのかどうかはよくわかりませんが、ちょっとした貼り紙には打ち勝つ程度の強い力を持ったデザインであることは間違いないでしょう。この力を正しく活用したい。これが当社がデザインを重要な価値として掲げる意味です。
デザインの力を活用するためにはどうしたらよいでしょうか。
まずは、どのように利用してほしいか、つまり利用者がどうあるべきかをしっかり考えて、意見を持つことです。エスカレーターの上で止まってほしいのか歩いてほしいのか。設計者がそこの意図をはっきりさせないから、みんなが言い争っているわけです。まずはそこをしっかり考えて意見を持ち、見解を打ち出すべきだと思います。
どうあるべきかが決まったら、利用者が他にそのように振る舞っているケースを探し、それに似せるということです。歩くべきならもちろん階段に似せるべきだし、止まるべきならもっとエレベーターとか電車とかに似せるべきでしょう。どのように利用すべきかが直感的にわかることが大事です。
どういうときにデザインをするのでしょうか。
エスカレーターのデザインだと相手は利用者ということになりますが、顧客や利用者、取引先や一緒に働く人、相手は誰でもいいわけです。
デザインする対象も、別にエスカレーターのような工業製品には限りません。ソフトウェアでも、人事制度でも、自分のキャラだっていいわけです。
何につけても、相手にとって何が望ましいのかをしっかり考えて、そのための行動を取らせるような見た目やコミュニケーションをつくるということです。大事なことですよね。
では今週もがんばりましょう!