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ビジネスデザイン統括部長代理 兼 シニア・ヘルスケアビジネス推進室長
松岡純一
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ビジネスデザイン統括部 シニア・ヘルスケアビジネス推進室 ゼネラルマネージャー
小畑英介
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テクノロジーデザイン統括部 開発センター 基盤技術課 課長
蓮見敏昭
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ビジネスデザイン統括部 プロダクトサービスビジネス推進室
是澤正一
課題自社ソリューションのモバイル対応が急務。多彩なデバイスに対応する負担が障壁に
――介護業界において、システムのモバイル対応が求められている背景を教えてください。
小畑:介護サービス統合管理システム「KitFit SilverLand」では、介護事業者や社会福祉法人、医療法人といった認可事業者における事務系業務を効率的に処理することができます。 国への請求など事務処理のほか、スケジュール管理、どのような介護サービスを提供したのか記録する仕組みなどを備えた自社開発パッケージソフトウェアです。
介護サービスは、国の財政が厳しいこともあり、介護保険制度が適用される事業者が使える予算が限られています。その一方で、ホームヘルパーや看護師の給与や働き方などの待遇改善も必要。そこで少人数でも業務を回せるように、ICTや介護ロボを活用した負荷軽減に取り組んでおり、国もICT導入を推奨しています。
――モバイルアプリでは、実際に使用する現場部門の声を聞き、何を求めているのか、どうすれば使いやすいのか、一つ一つ形にしていかなくてはならない。
松岡:訪問介護のホームヘルパーは、直行直帰で働くことが多い職種です。「書類を受け取るためだけに事務所へ行く手間を削減したい」「コミュニケーションを密にしたい」といった効率化やペーパーレス化のニーズに対応したソリューションはガラケー時代からありました。しかし、介護事業者等が1人ひとりに端末を配布するコスト負担が大きく、それほど普及しませんでした。しかし、現在は誰もがプライベートのスマートフォンを持ち、アプリを使ってコミュニケーションを取るのが当たり前になっている中、仕事でも使いたいと考えることが自然になりつつあります。いわゆるBYOD(Bring Your Owned Device)で運用することで、現場で課題を解決するための環境を整えることができます。
働き方改革への対応が求められる中、モバイル対応は急務でした。私たちはまず、訪問介護における実績記録からモバイルサービスの提供を始めることしました。
蓮見:ところが、検討段階で大きな障壁にぶつかりました。個人が使うスマートフォンの場合、機種やOSバージョンはさまざま。しかも、メーカーの都合でバージョンアップや仕様変更が行われるため、その都度私たちも動作検証や修正対応が必要になります。
どうすれば限られた人員でコストをかけず開発でき、機種のバージョンアップにいち早く対応できるのか。この悩みを解消してくれるのが、UnifinityPlatformでした。
導入UnifinityでマルチOSを実現、本質的な機能の開発に注力
――Unifinityに決めた理由を、詳しく教えてください。
是澤:スピード感を持ってリリースしたかったので、マルチOS対応を任せられるプラットフォームを利用し、業務要件や使い勝手といった本質的な機能の開発に注力できないか検討しました。そのためには開発者のスキルセットの観点も重要で、もともとの機能をよく知っているウェブ系エンジニアが、新たなスキルを必要とせずモバイル開発に携われるのも魅力でした。
Unifinityは、OSごとに異なる開発スキルやノウハウを必要とせず開発が可能です。アプリの利用者は、AppleやGoogleの公式アプリストアからUnifinityが提供する共通のアプリをダウンロードし、簡単な初期設定をするだけで訪問介護の機能を利用できるようになります。そのため、個々に開発したアプリはアプリストアへ申請する必要が無く、配布する手間も省けます。
――モバイルアプリの開発で、工夫したことや難しかったポイントを教えてください。
是澤:Unifinityの謳い文句は「簡単」。でも、実際にどうなのか判断が必要です。そこで、検証メンバーでUnifinityの特徴を理解し、見極めることにしました。
検証により、Unifinityによって開発の負担を軽減できることがわかりました。さらに効率的にプロジェクトが進められるように、共通で使える機能はモジュール化しておき、多くの開発者が共有できるよう準備しました。
10画面程度を約4カ月で開発しましたが、これは開発したアプリの機能や動きを試しながら慎重にスタートを切ったためです。慣れてくると、かなり簡単に開発できるようになります。モバイル技術を保有していないメンバーでも、リファレンスを参照するだけで開発できました。
画面デザインは、パワーポイントと同じ感覚で作れ、サーバー側におけるKitFit SilverLandとの連携も、APIで容易につなぐことができました。
蓮見:開発を進める中、不明点もあったのですが、メールでのやりとりやサンプル提供でユニフィニティーからのサポートを受けて解決。また、社内でも解決方法を共有して進めるようにしました。
未来介護業界がモバイルの恩恵を受けられる道筋をつけたい
――今後のモバイル化について、見通しや将来構想をお聞かせください。
小畑:訪問介護での実績記録にアプリを使うわけですが、克服しなければならない大きな課題があります。保険適用に関する管理業務を行うのは各自治体なのですが、自治体ごとにルールが様々です。紙やハンコのない記録は認めない自治体もあり、優れたアプリを作ったとしても使えないケースが発生します。そこで、介護業界にとってモバイルがいかに価値ある手段なのか、技術的に信用できるのかといったことを自治体に説明してまわり、北海道から九州まで広がるお客様が、モバイルの恩恵を受けられるように環境を整えていくつもりです。介護業界にとってプラスになるよう、率先して道筋をつけていきたいですね。
松岡:都築電気のシニア・ヘルスケア向けソリューションをモバイル対応するプロジェクトでは訪問介護の実績記録からスタートしましたが、今後は通所介護(デイサービス)などの記録系業務にも順次、拡張していく予定です。
構想段階の話としては、医療、介護、健康、3つの柱でデータビジネスを展開したいと考えています。例えば、老化による体力低下が原因となって活動が減り、孤立するフレイル(虚弱)の対策に。個人の医療・健康情報を一元化するPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)についても注目しています。モバイルによって、社会的意義が大きい取り組みが可能になります。
新しい要望は増え続け、利用者も増えてくるため、よりユーザーが使いやすいアプリが必要に。今後もUnifinityをプラットフォームとして、ユーザビリティに優れたモバイルアプリの開発と展開を進めていくつもりです。